開発現場で働いていると、必ずと言っていいほど遭遇するフォーマット議論。「インデントは2スペース派vs4スペース派」「if文の後に空行入れるか問題」「アノテーションは改行すべきか論争」…。正直、こんな議論に時間使ってる間にバグ一個直せるよね?😅
フリーランスエンジニアとして色んなプロジェクトに参画してきた中で、「フォーマット警察」が開発効率を下げている現場を何度も見てきました。CIでフォーマットチェック失敗してPRブロック、独自ルール覚えるのに新人が1日潰す、レビューで本質的じゃない指摘ばかり…。
本当にそこまでフォーマットにこだわる必要あるの?現代の開発環境を踏まえて、改めて考えてみましょう。🤔
コーディングフォーマットとは何か
コーディングフォーマットとは、ソースコードの見た目やスタイルに関するルールのこと。具体的には:
- インデント:スペースかタブか、何文字分か
- 改行とスペース:括弧の前後、演算子の周り
- 命名規則:camelCaseかsnake_case
- 構造的ルール:import文の順序、メソッドの並び順
Kotlinならktlint
、JavaならGoogle Java Style
、PythonならBlack
みたいな自動フォーマッターが代表的ですね。
フォーマットの本来の意義
そもそもなぜフォーマットが重要視されるようになったのか?
チーム開発での統一性
複数人で開発する際、各自が勝手なスタイルで書くとコードが読みにくくなる。統一されたフォーマットで可読性向上。
レビュー効率の向上
スタイルが統一されていれば、レビュアーは本質的な部分(ロジック、設計)に集中できる。フォーマットの指摘に時間を取られない。
新メンバーの学習コスト軽減
プロジェクト固有のコーディングスタイルを覚える手間を減らし、新しいメンバーがすぐにコードを理解できる。
diffの見やすさ
フォーマットが統一されていると、Git diffで実質的な変更点が分かりやすくなる。
これらは確かに理にかなった理由です。しかし…
IDEの進歩が変えたフォーマット事情
昔と今では開発環境が大きく違います。
昔の開発環境(2000年代前半)
- テキストエディタでのコーディングが主流
- シンタックスハイライトも限定的
- 自動補完機能が貧弱
- 手動でのフォーマット管理が必須
現在の開発環境
- 強力なIDE:IntelliJ IDEA、Android Studio、VS Code
- リアルタイム補正:タイプ中に自動でフォーマット
- スマート機能:自動import、リファクタリング支援
- 統合された品質管理:リアルタイムエラー検出、警告表示
Android Studioを使っていれば、Ctrl+Alt+L
一発で標準的なフォーマットに整形されます。わざわざ手動でぐちゃぐちゃなコードを書く方が難しい。
よくあるフォーマット論争の不毛さ
実際の現場でよく見る、時間の無駄な議論たち:
インデント戦争
// 2スペース派
if (condition) {
doSomething()
}
// 4スペース派
if (condition) {
doSomething()
}
結論:どっちでも読めます。
括弧の位置論争
// K&Rスタイル
if (condition) {
}
// Allmanスタイル
if (condition)
{
}
結論:どっちでも読めます。
アノテーション改行問題
// 改行派
@Override
@Suppress("unused")
fun method() {}
// 同行派
@Override @Suppress("unused") fun method() {}
結論:長くなければどっちでも読めます。
import文の順序
// アルファベット順派
import android.app.Activity
import java.util.List
import kotlinx.coroutines.launch
// 種別順派
import java.util.List
import android.app.Activity
import kotlinx.coroutines.launch
結論:IDEが勝手に整理してくれます。
これらの議論、30分かけて決めても開発効率への影響は皆無。その時間でユニットテスト一つ書く方が1000倍有意義。
フォーマット追求の弊害
理想を求めすぎると、かえって開発効率が下がる事例:
CI/CDパイプラインの複雑化
# .github/workflows/format-check.yml
- name: Check formatting
run: ./gradlew ktlintCheck
# フォーマットミスで全体のビルドが止まる
問題点:
- フォーマットミスでPRがブロックされる
- 本質的じゃない理由で開発フローが止まる
- CIの実行時間が増加
レガシーコードの大規模フォーマット変更
// Before: 動作するコード
if(user!=null&&user.isActive()){return user.getName();}
// After: フォーマット適用
if (user != null && user.isActive()) {
return user.getName()
}
問題点:
- Git blameが追跡困難になる
- 巨大なdiffでレビューが困難
- 既存のブランチとのマージコンフリクト頻発
過度なカスタマイズによる混乱
// プロジェクトA
class UserRepository(
private val api: UserApi,
private val dao: UserDao
) {
// プロジェクトB
class UserRepository(private val api: UserApi,
private val dao: UserDao) {
問題点:
- プロジェクト間の移動コストが増加
- 新メンバーが独自ルールの学習に時間を消費
- ルール策定・メンテナンスの工数
フォーマット議論による開発停滞
実体験:「メソッドチェーンの改行ルール」で1時間会議した現場がありました。その1時間で実装できた機能を考えると…😅
読めれば十分、IDEデフォルトで良い
現実的な解決策:
IDEの標準フォーマッターを使う
- Android Studio/IntelliJ IDEAのデフォルト設定
- 追加設定なし、チーム全員が同じ環境
- 業界標準に準拠
本質的な品質に注力する
フォーマットより重要なこと:
- ロジックの正確性:バグのないコード
- 命名の適切さ:意図が伝わる変数名・関数名
- 設計の妥当性:責務分離、SOLID原則
- テストの充実:動作保証、リグレッション防止
最小限のルールに留める
必要最小限:
- 文字コード(UTF-8)
- 改行コード(LF)
- ファイル末尾の改行
それ以外はIDEにお任せ。
フォーマットより100倍効果的な可読性向上策
細かいフォーマットルールより、こっちの方がよっぽど可読性に貢献します:
ファイル・クラスの適切な分割
// フォーマット完璧でも地獄
class UserController {
// 500行の巨大メソッド、責務不明確
fun handleUserRequest() {
// 認証処理
// バリデーション
// DB操作
// 通知送信
// ログ出力
// ... (あと400行)
}
}
// フォーマット適当でも読みやすい
class UserRegistrationUseCase{
fun register(user:User):Result<Unit>{/*10行で完結*/}
}
class UserValidationService{/*バリデーション専用*/}
class UserNotificationService{/*通知専用*/}
効果:インデント2個か4個かより、1ファイル50行に収まってる方が1000倍読みやすい。
モジュール・パッケージ構造の整理
// 見やすい構造
feature/
├── user/
│ ├── domain/ # ビジネスロジック
│ ├── data/ # データアクセス
│ └── presentation/ # UI
└── auth/
├── domain/
└── data/
効果:どこに何があるか一目瞭然。括弧の位置より重要。
意味のある命名
// フォーマット完璧でも意味不明
if (u.f == 1) {
d.s(u);
}
// フォーマット適当でも意味明確
if(user.isActive){
database.save(user)
}
効果:変数名が適切なら、多少のスペース違いは気にならない。
Single Responsibility Principle
// 責務不明確(フォーマット完璧でも読みにくい)
class UserManager {
fun processUser() { /* 何でもかんでも */ }
}
// 責務明確(フォーマット適当でも分かりやすい)
class UserValidator{fun validate(){}}
class UserRepository{fun save(){}}
class UserNotifier{fun notify(){}}
大規模プロジェクトほど重要:人数が増えるほど、設計・分割・命名の重要性が指数関数的に高まります。フォーマットの細かいルールは本当にどうでもよくなる。
それでも最低限やるべきこと
完全にフォーマットを無視しろというわけではありません。現実的なバランスとして:
チーム内でのフォーマッター統一
// 全員がAndroid Studio/IntelliJ IDEAのデフォルト設定を使用
// 特別な設定ファイルは不要、IDEインストール後そのまま
ポイント:カスタムルールは作らない。IDEデフォルトで十分。要は「合わせる」ことが大事で、細かいルールの良し悪しは二の次。
新機能開発時の意識
新機能は一から作るので、せっかくならフォーマットを意識:
// 新機能開発時は最初からキレイに
class NewFeatureViewModel(
private val useCase: NewFeatureUseCase
) : ViewModel() {
// フォーマットを意識して書く
}
追加コストほぼゼロで、最初からキレイなコードになります。
既存機能修正時の部分フォーマット
既存コードを変更する際は、変更箇所のみフォーマット適用:
// Before: 既存の汚いコード
fun updateUser(user:User){if(user.isValid()){repository.save(user)}}
// After: 変更箇所のみフォーマット
fun updateUser(user: User) {
if (user.isValid()) {
repository.save(user)
// 新機能:更新ログ追加
logger.info("User updated: ${user.id}")
}
}
重要:ファイル全体にフォーマットをかけてはダメ。diffが地獄になります。
やりすぎちゃった実例:フォーマット地獄体験談
実際に経験した「フォーマット頑張りすぎて失敗した」パターン:
Dangerによる監視地獄
フォーマット統一に張り切って、DangerでPRのフォーマットを自動監視する仕組みを導入。結果…
# danger設定が暴走
- フォーマット警告が大量発生
- 変更していない箇所(変更行の上下)まで指摘
- そこを直すと、今度はその周辺コードも指摘
- 変更地獄でCIも圧迫、開発フロー完全停止
教訓:自動化ツールは設定を慎重に。過剰な監視は開発効率を殺す。
全ファイルフォーマット地獄
「早く統一したい」という善意から、issue関係ない箇所まで全フォーマット。結果のPR:
// 3000行の差分が発生
- if(user!=null){
+ if (user != null) {
// 本当の変更はここだけなのに...
user.updateProfile(newProfile)
- }
+ }
問題:
- どこがフォーマットで、どこが新機能か判別不可
- レビュアーが「どこ見ればいいかわからん」と困惑
- 「フォーマットだけのPR作れ」vs「機能と一緒でいいじゃん」で喧嘩勃発
教訓:大規模フォーマット変更は単独のPRで、かつ慎重に計画を。
まとめ:時間を本当に価値のあることに使おう
フォーマット論争に時間を使うなら:
- ユニットテストを一つ追加する
- リファクタリングで技術的負債を減らす
- ドキュメントを整備する
- 新しい技術を学習する
これらの方が確実に開発効率とコード品質を向上させます。
フォーマットは「読めれば十分、最低限の統一で十分」。IDEデフォルトでチーム統一して、本質的な開発作業に集中しましょう。あなたの貴重な時間、フォーマット警察じゃなくて価値のある作業に使いませんか?🚀

この記事は私が書きました 😅
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