空き家不動産投資の始め方:購入編

ビジネス考察

前回の記事で空き家不動産投資のブームについて紹介しましたが、今回は空き家投資の第一歩となる「物件購入」について、素人目線で詳しく調べてまとめてみました。

空き家物件はどこで見つけるのか?

空き家投資で成功するためには、まず良い物件に出会うことが重要です。一般的な不動産市場に出回らない格安物件を見つけるには、複数のルートを使い分けることがポイントです。ここでは実際に投資家が活用している主要な物件探しの方法を紹介します。

一般的な不動産サイトでの探し方

SUUMOやアットホーム、ホームズなどの大手不動産サイトでも空き家物件は見つかります。検索条件で「中古一戸建て」「価格100万円以下」などで絞り込むと、空き家投資に適した格安物件が多数ヒットします。

大手サイトのメリットは情報量の多さと検索機能の充実です。写真や間取り図、周辺環境の情報も豊富で、効率的に物件を比較検討できます。ただし、競合も多いため、良い物件はすぐに売れてしまう傾向があります。

空き家バンクの活用法

各自治体が運営する「空き家バンク」は、空き家投資家にとって宝の山です。市町村が空き家の有効活用を促進するために運営しており、一般の不動産市場には出てこない格安物件が多数登録されています。

  • 全国版:全国空き家バンク(国土交通省)
  • 地方自治体版:各市町村のホームページ

空き家バンクの特徴は、自治体が間に入るため比較的安心して取引できることです。また、移住支援制度やリフォーム補助金とセットで提供されている場合もあり、総投資額を抑えられる可能性があります。

地方不動産業者への直接相談

地方の不動産業者に「空き家投資用の格安物件を探している」と相談すると、まだ市場に出ていない物件を紹介してもらえることがあります。特に人口減少地域では、業者も空き家の処分に困っているケースが多く、win-winの関係を築けることがあります。

地元業者のメリットは、地域の事情に詳しく、物件の履歴や近隣情報を教えてもらえることです。また、リフォーム業者や管理会社の紹介も受けられるため、購入後のサポートも期待できます。

狙い目の物件条件

空き家投資で成功するためには、物件選びが最も重要です。実践者たちが語る「良い空き家物件」の条件を、立地・物件・価格の3つの観点からまとめました。投資物件である以上、感情的にならず客観的な判断基準を持つことが大切です。

立地条件の見極め

立地は賃貸需要に直結する最重要ファクターです。以下の条件を満たす物件を優先的に検討しましょう。

  • 最寄り駅から徒歩20分以内(車社会の地方なら車で15分以内)
  • コンビニ、スーパーが近くにある
  • 学校や病院へのアクセスが良い
  • 極端に辺鄙な場所は避ける
  • 市街化調整区域でないことを確認
  • 近隣に廃墟や問題のある建物がない

建物状態のチェックポイント

構造的な問題があると修繕費が高額になるため、以下の点を重点的に確認します。

  • 建物の骨組み(構造)がしっかりしている
  • 雨漏りがない(屋根の状態が良い)
  • 基礎にひび割れがない
  • 1981年以降の新耐震基準かどうか
  • 水道、電気、ガスが使用可能(または復旧可能)
  • 汲み取り式トイレか水洗トイレかの確認
  • 再建築不可物件でないことの確認

適正価格の判断基準

空き家投資では価格だけでなく、投資全体の収益性を考える必要があります。

  • 購入価格:10万円〜100万円程度
  • リフォーム予算込みで総投資額200万円以内
  • 周辺の賃貸相場を調べて利回り10%以上を目安
  • 固定資産税・都市計画税も含めた実質利回りで計算
  • 将来の出口戦略(売却・建て替え)も考慮

内見時のチェックポイント

実際に物件を見学する際は、表面的な汚れに惑わされず、構造的な問題を見抜くことが重要です。以下のチェックリストを参考に、漏れなく確認しましょう。

外観チェック

建物の外側から全体的な状態を把握します。

  • 屋根の状態:瓦のズレ、雨樋の破損、屋根材の劣化
  • 外壁:ひび割れや剥がれ、シーリングの劣化
  • 基礎部分:クラックやシロアリ被害の痕跡
  • 庭や敷地:境界標の有無、隣地との関係
  • 駐車場:確保可能な台数、接道状況

内部チェック

室内では構造的な問題と設備の状態を重点的に確認します。

  • :沈みや軋み、シロアリ被害
  • 壁・天井:雨漏り跡、カビ、構造的なひび割れ
  • 水回り:キッチン、風呂、トイレの老朽化度合い
  • 電気設備:ブレーカー、コンセント、照明の動作確認
  • トイレ:汲み取り式か水洗式か、配管の状態
  • ガス設備:都市ガスかプロパンガスか

周辺環境と近隣関係

物件単体だけでなく、周辺環境も賃貸需要に大きく影響します。

  • 近隣住宅の状況:空き家率、住民の年齢層
  • 交通量や騒音:幹線道路、工場、線路の影響
  • 日当たりや風通し:周辺建物による影響
  • 近隣住民との関係:空き家期間中のトラブルの有無

価格交渉のテクニック

空き家は売り主も早く手放したいケースが多く、適切な交渉により大幅な価格ダウンが期待できます。ただし、相手の立場を理解し、win-winの関係を築くことが重要です。

効果的な交渉ポイント

以下の要素を組み合わせて交渉すると成功率が上がります。

  • リフォーム費用の見積もり提示:具体的な修繕箇所と費用を示す
  • 現金一括払いのアピール:融資特約なしの確実性を強調
  • 早期決済の提案:売主の早期処分希望に応える
  • 他の物件との比較:相場感を示しつつ競合をほのめかす
  • 長期保有の意思表明:転売目的でないことを示す

実際の交渉事例

  • 販売価格80万円 → 50万円で成約(リフォーム費用30万円を理由に)
  • 販売価格150万円 → 100万円で成約(現金一括+早期決済で)
  • 販売価格200万円 → 逆に50万円もらって引き取り(解体費用負担を回避したい売主)

特殊なケース:お金をもらって物件取得

地方の過疎地域では、所有者が処分費用を負担してでも手放したいケースがあります。

よくある理由

  • 固定資産税の支払いから逃れたい
  • 解体費用(数百万円)より安く手放したい
  • 相続したが管理できず、近隣トラブルを避けたい

注意点

  • なぜお金を払ってまで手放したいのか理由を徹底調査
  • 土壌汚染、事故物件、法的問題などの隠れたリスクがないか確認
  • 近隣住民からのヒアリングを必ず実施

購入手続きと法的注意点

物件が決まったら、法的な問題を回避しながら確実に所有権を移転する必要があります。空き家特有の注意点も多いため、専門家のサポートを受けることをお勧めします。

購入手続きの流れ

1. 物件の申し込み 気に入った物件が見つかったら、不動産業者に購入の申し込みをします。この段階で手付金の額や決済時期も協議します。

2. 重要事項説明 宅地建物取引士から物件の詳細説明を受けます。再建築不可、市街化調整区域、農地法などの法的制約がないかしっかり確認しましょう。

3. 売買契約 契約書に署名・押印し、手付金(通常は価格の10%程度)を支払います。契約条件や特約事項は必ず確認してください。

4. 融資手続き(必要な場合) ローンを組む場合は銀行での融資手続きを行います。空き家投資では現金購入が多いですが、融資を使う場合は物件の担保価値が重要になります。

5. 決済・引き渡し 残代金の支払いと所有権移転登記を行い、鍵の引き渡しを受けます。同時に火災保険の加入手続きも行います。

購入時の重要な注意点

再建築不可物件の確認 格安物件の中には建築基準法の接道要件を満たしていない「再建築不可」物件があります。リフォームは可能ですが、建て替えができないため将来的な資産価値や出口戦略を慎重に検討する必要があります。

境界の確定 古い物件では隣地との境界が曖昧な場合があります。購入前に境界が確定しているか確認し、必要に応じて測量を行いましょう。境界トラブルは後々大きな問題になります。

ライフライン復旧費用

  • 水道:止められている場合の復旧費用、水道管の老朽化
  • 電気:引き込み工事、分電盤の交換費用
  • ガス:都市ガスかプロパンガスか、配管工事の必要性

無料譲渡と税務上の注意点 0円での譲渡は贈与とみなされ、贈与税の対象となる可能性があります。また、登録免許税も売買(0.15%)より贈与(2%)の方が高額になるため、「1円売買」として売買契約にするのが一般的です。

維持管理費用の把握

物件購入後にかかる費用も事前に把握し、投資計画に組み込む必要があります。

税金関係

  • 固定資産税:建物と土地にかかる年税(地域により大きく異なる)
  • 都市計画税:市街化区域内の物件にかかる
  • 所得税・住民税:賃貸収入から経費を差し引いた所得に課税

保険・その他

  • 火災保険・地震保険:空き家期間中と賃貸開始後で保険の種類が変わる
  • 管理費用:自主管理か委託管理かで大きく異なる

実際の投資事例(YouTube実例)

50万円物件の高利回り投資

  • 購入価格:50万円、総投資額:120.5万円
  • 結果:月7.2万円で賃貸成功、利回り77%
  • ポイント:掃除のみで賃貸可能だった好例

群馬県の成功事例

  • 購入価格:180万円、DIY費用:50万円
  • 結果:月3-4万円で賃貸成功(当初5万円想定から下方修正)
  • 課題:リフォーム期間半年、賃料設定ミス

茨城県の失敗事例

  • 購入価格:240万円、DIY費用:50万円
  • 結果:入居者がつかず340万円で売却(ほぼトントン)
  • 原因:物件劣化の見誤り、DIYの技術的限界

東京都荒川区の苦労事例

  • 購入価格:450万円、想定総投資:150万円超
  • 想定:月8-9万円で賃貸予定、利回り15-16%見込み
  • 問題:前住民の中途半端DIYの修正に想定外の労力

参考動画

まとめ

空き家物件の購入は、情報収集と現地確認、そして冷静な投資判断が成功の鍵です。格安だからといって飛びつかず、以下のポイントを必ずチェックしましょう。

購入前の必須チェック項目

  • 立地の賃貸需要と将来性
  • 建物の構造的問題の有無
  • ライフライン復旧費用の把握
  • 法的制約(再建築不可、市街化調整区域など)
  • 境界確定状況
  • 近隣関係とトラブル履歴

投資計画で考慮すべき費用

  • 購入価格+リフォーム費用
  • 各種税金(固定資産税、所得税など)
  • 保険料、管理費
  • ライフライン復旧・維持費用

また、購入はゴールではなくスタートです。この後のリフォーム、賃貸募集、管理業務も含めた全体的な投資計画を立てた上で、物件選びを行いましょう。

次回は「リフォーム編」として、実際のDIY作業や業者選び、費用を抑える工夫について詳しく解説予定です。空き家投資に興味のある方は、まずは空き家バンクやSUUMOでどんな物件があるか見てみることから始めてみてはいかがでしょうか。

ただし、投資にはリスクが伴います。特に空き家投資は立地選びを間違えると長期間空室に悩まされる可能性もあります。十分な市場調査と資金計画を立てた上で、慎重に検討することをお勧めします。

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