「フリーランスのエンジニアで大手企業と直契約できてる人って存在しないと思ってる」
このポストがXで50万閲覧を超えてバズった。引用リプライは100件近く、ほぼ全員が「わかる」「うちも無理」の大合唱。
俺もフリーランスエンジニアとして働いてきた人間だから、この「直契約できない問題」は身をもって知っている。そして同時に、間に挟まるエージェントという存在に、ずっと納得いってない。
この記事では、なぜフリーランスが大手と直契約できないのかを整理した上で、「じゃあエージェントって本当に必要なの?」という疑問に、現役フリーランスの本音でぶつかっていく。
なぜフリーランスは大手企業と直契約できないのか
まず背景を整理する。大手企業がフリーランス個人との直契約を避ける理由は、主にこの5つだ。
ベンダーリストの壁
大手企業には「取引して良い会社リスト(承認済みベンダー)」がある。このリストに載っていないと、そもそも購買システムで発注ボタンが押せない。個人事業主がこのリストに入れることはほぼない。
賠償能力の問題
システム障害で数百万〜数億円の損害が出た場合、個人事業主の資産では回収不能になる。法人なら会社資産や保険から回収の見込みが立つ。企業のリスク管理部門は「回収できない相手との契約」を許可しない。
| 項目 | 個人事業主 | 法人経由 |
|---|---|---|
| 資産規模 | 数百万〜数千万円 | 数千万〜数十億円 |
| 保険加入率 | 低い(任意) | 高い(取引先が義務化) |
| 破産リスク | 即破産でほぼ回収0 | 清算手続きで一部回収可能 |
| 企業の心理 | 「取れないかも」→契約しない | 「取れるはず」→契約OK |
源泉徴収の面倒さ
ITエンジニアの業務は源泉徴収不要なケースが多い。だが「これはデザイン料?プログラミング?」の判断が曖昧で、ミスれば追徴課税。経理部門は「判断が面倒な相手とは契約しない」という結論に至る。法人経由なら「外注費」で一律処理できて終わり。
コンプライアンス・監査の壁
「なぜ個人相手にリスクを取ったのか?」と監査法人や株主から追及される可能性がある。法務・購買・経理の全部門が「個人はNG」でルール化してしまう。
企業規模で全然違う
ただし、これは大手に限った話だ。
| 企業規模 | 直契約のしやすさ | 実態 |
|---|---|---|
| 大手・上場企業 | ほぼ不可能 | ベンダー登録必須、SES/エージェント経由がデフォ |
| 中堅(100〜999人) | 条件次第でOK | 信頼できる個人なら直契約の実績あり |
| 中小・ベンチャー | 普通にある | マージンもったいないから直契約が主流の会社も |
| スタートアップ | ほぼ100%直 | エージェント使う余裕がない |
ここまでが「制度上の理由」の整理だ。筋は通っている。
でも、俺はこの構造に納得していない。
エージェントの「実力」を冷静に見てみる
エージェントを挟めば上記の問題が解決する。制度上はそうだ。
でも、エージェントが「法人の看板」以外に何を提供してくれているか、冷静に考えたことがあるだろうか。
俺がフリーランスとしてエージェントと付き合ってきた実感を、正直に書く。
営業力?——案件を右から左に流しているだけ
エージェントの営業担当と話すと、だいたいこうなる。
「○○さんのスキルセットに合う案件がありまして〜」
これ、データベースでスキルタグを検索してマッチしたものを流しているだけだ。俺の強みや志向を理解した上で提案してくれた経験は、ほぼない。
営業力で案件を開拓している? 違う。企業側から「エンジニア欲しい」と依頼が来て、それを抱えている登録者リストから流す。仲介であって、営業ではない。
法務の強さ?——テンプレ契約書を渡すだけ
エージェントが法務面でフリーランスを守ってくれるイメージがあるかもしれない。
実態はテンプレートの準委任契約書を交わすだけだ。案件ごとにリスクを精査して契約条件を交渉してくれるわけじゃない。損害賠償条項も免責条項も、全案件で同じテンプレ。
要するに、エージェントが提供している本質的な価値は「法人の看板」と「取引先リストに載っている権威」だけだ。
それに対してマージン20〜30%。月単価80万円なら、毎月16〜24万円がエージェントに消える。年間で192〜288万円。
この金額に見合う価値を提供しているか? 俺は疑問だ。
エージェントは流動性を上げているのか?ボトルネックになっていないか?
エージェントの存在意義として「仕事の流動性を上げている」という主張がある。フリーランスと企業を効率的にマッチングしている、と。
本当にそうか?
情報が溢れる時代に「仲介」の意味
2025年だ。LinkedIn、X(Twitter)、Wantedly、YOUTRUST——エンジニアと企業が直接つながるプラットフォームはいくらでもある。
にもかかわらず、大手案件は「エージェント経由でないと契約できない」。これは流動性を上げているのではなく、制度の壁をエージェントが独占的に埋めているだけだ。
もし大手企業が個人事業主とも直接契約できる制度に変わったら、エージェントの大半は存在意義を失う。つまりエージェントは「制度の歪み」で食っている。
マッチングサイトの台頭
最近は「エージェントを挟まない直マッチング」を売りにしたサービスも増えている。企業とフリーランスが直接やりとりして、プラットフォーム手数料は数%程度。
まだ大手案件は少ないが、「仲介に20-30%払う時代はおかしい」と感じる人が増えている証拠だ。この流れは止まらないと思う。
もう大手と契約しなくてよくね?
ここで根本的な問いを投げたい。
フリーランスエンジニアが大手企業にこだわる理由、もうなくないか?
大手=安定、は本当か?
「大手案件は安定してる」とよく言われる。確かに契約期間は長めで、突然切られるリスクは低い。
でもそれ、エージェントにマージン抜かれた上での「安定」だ。月80万の案件でも手取り56〜64万。中小・ベンチャーと直契約で月80万もらった方が、よほど「安定」じゃないか?
AI時代に大手信仰は危険
もう一つ。AI時代に入って、大手企業の「安定」自体が怪しくなっている。
- AIでコーディング工数が激減 → エンジニアの頭数が不要に → 真っ先に切られるのは外注(=フリーランス)
- 大手のDXプロジェクトはAIツール導入で縮小傾向 → 案件自体が減る
- 大手の意思決定は遅い → AI活用で先行する中小・ベンチャーの方がエンジニアの出番が多い
「大手案件を取れることがフリーランスのステータス」みたいな価値観は、もう賞味期限切れだと思う。
フリーランスの本質に立ち返る
そもそもフリーランスになった理由は何だ?
自分で仕事を選びたい、スキルで勝負したい、会社に縛られたくない——そういう動機でこの働き方を選んだはずだ。
なのに結局エージェントに案件を選んでもらって、マージンを抜かれて、大手の購買ルールに従って働いている。それって「会社員の外注版」じゃないか?
中小・ベンチャーとの直契約、個人開発、自分のサービス運営——エージェントに依存しない選択肢を持つことが、本当の意味での「フリーランス」だと俺は思う。
結論:制度は変わらないが、選択肢は変わった
大手企業が個人と直契約できない制度は、すぐには変わらない。ベンダーリスト、賠償能力、コンプライアンス——これらの壁は合理的な理由がある。
でも、だからといって「エージェントに20-30%払い続けるしかない」は思考停止だ。
- 中小・ベンチャーとの直契約は普通に成立する
- マッチングプラットフォームは増え続けている
- AI時代に大手案件の価値は下がっていく
- 個人開発・自分のサービスという選択肢もある
エージェントが悪いとは言わない。制度の歪みを埋める存在として、今は必要な場面もある。
ただ、「エージェントを通さないと仕事ができない」と思い込んでいるフリーランスが多すぎる。
その思い込みを外した時、フリーランスとしての選択肢は一気に広がる。
看板と権威に年間200万以上払い続けるか、自分で道を切り開くか。
選ぶのは自分だ。



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