GAFAより、すき家や日高屋の方がもっとすごいかもしれない説!

ビジネス考察

突然ですが、質問です。

次の経営者の中で、「最もすごい」のは誰だと思いますか?

  • スティーブ・ジョブズ(Apple創業者)
  • イーロン・マスク(Tesla・SpaceX CEO)
  • ビル・ゲイツ(Microsoft創業者)
  • 小川賢太郎(ゼンショー会長、すき家創業者)
  • 神田和幸(ハイデイ日高会長、日高屋創業者)

おそらく多くの人が「ジョブズ」「マスク」と答えるでしょう。

それは間違いではありません。彼らは本当に偉大です。

しかし、この記事を読み終わる頃には、あなたの視点は少し変わっているかもしれません。

なぜなら、世間の「すごい経営者ランキング」は、経営の「難易度」や「労力」、そして「社会インフラとしての重要性」という側面をあまり評価していないからです。

この記事で語るのは、少し変わった視点です。

一般的に「すごい経営者」の評価軸は、イノベーション、時価総額、影響範囲、ストーリー性などです。

しかし、「経営の難易度」「日々の労力」「社会インフラとしての重要性」という別の軸で見たとき、実は最も過小評価されているのが「外食チェーンの経営者」ではないか、というのがこの記事の主張です。

もしかしたら極端に聞こえるかもしれません。

でも、一度この視点で考えてみてください。

「なぜ外食チェーンの方が難易度が高いかもしれないのか?」

その理由を、これから徹底的に解説していきます。

  1. 外食産業の大変さ
    1. ホリエモンの「飲食はブルーオーシャン」理論
    2. 規模別の難易度:「簡単」と「地獄」の境界線
  2. 規模拡大の異次元の大変さ:ビジネスの総合格闘技
    1. 業種別「大規模化の複雑性」比較
    2. なぜ外食だけレバレッジが効かないのか?
    3. 8つの複雑性要素を業種別に比較
    4. コモディティという呪い:ありふれた商品で勝負する難しさ
  3. すき家という「怪物」の正体
    1. 1店舗から2000店舗への道のり
    2. もはや牛丼屋じゃない理由
  4. 理念なき者は生き残れない:外食経営者の覚悟
    1. なぜこんな地獄のようなビジネスを続けられるのか?
    2. 小川賢太郎(すき家)の理念
    3. 神田和幸(日高屋)の理念
    4. 理念がなければ、この地獄は耐えられない
    5. 違いはあるが、本質は同じ
    6. これが「人類救済の苦行」の正体
    7. だから彼らは「菩薩」なのだ
    8. スーパーハードワーカーたちの素顔
  5. 世間の評価は「一面的」かもしれない
    1. なぜ世間は「Apple > すき家」と思うのか?
    2. Appleとすき家のビジネス構造を比較
    3. マズローの欲求階層説が示す真実
  6. 数字で見る「真の影響力」
    1. 日本人への影響範囲
    2. 2024年の飲食業界データ
  7. 8つの地獄を乗り越える者たち
    1. 賞味期限との戦い
    2. バイトテロという悪夢
    3. 立地選定という科学
    4. メニュー最適化という芸術
    5. サプライチェーンという迷宮
    6. 人材流動性40%という現実
    7. 食中毒という一発アウト
    8. 価格転嫁という綱渡り
  8. おわりに:もっと敬意を払おう
    1. 「欲望を満たす天才」vs「生存を支える菩薩」
    2. 世間評価を別の軸で見ると
    3. 一つの視点として
  9. あとがき

外食産業の大変さ

ホリエモンの「飲食はブルーオーシャン」理論

ホリエモン(堀江貴文)の有名な発言を紹介します。

「飲食はブルーオーシャン。理由は経営知らない馬鹿が趣味で作る店がほとんどで、そいつらがほとんど自爆レベルで店を潰す。しかし、ちゃんとしている人なら簡単なビジネスなのよ」

これは100%正しいです。ただし、「小さくやるなら」という前提付きで。

実際、個人店や5店舗程度のチェーンなら:

  • 月商300〜500万円で手取り30〜80万円は余裕
  • 競合の9割が「趣味で経営してる素人」
  • SNSでちょっと映えれば即満席

年収2,000〜5,000万円は普通に狙える世界です。

しかし、「大きくする」と急に難易度がバグります。

規模別の難易度:「簡単」と「地獄」の境界線

規模必要な能力・リスクホリエモンの理論
1〜5店舗味+SNS+ちょっとした経営センス←ここまでは簡単(ブルーオーシャン)
10店舗超突然「人・衛生・ブランド管理」が爆発←ここから死亡率90%
50店舗超フランチャイズor直営の呪い+バイトテロ地獄←すき家ですら死にかけた
100店舗超もう「飲食」じゃなく「製造業+物流+IT企業」←完全に別次元

実際のデータを見てみましょう:

飲食店の生存率(中小企業庁・帝国データバンク調査):

  • 開業後1年以内の廃業率:約30%
  • 開業後3年以内の廃業率:約50%
  • 100店舗以上に成長できる確率:0.1%以下

つまり、1000店舗に1社しか100店舗を超えられない。

日高屋の450店舗、すき家の2,000店舗がどれだけ異常かわかるでしょう。

規模拡大の異次元の大変さ:ビジネスの総合格闘技

業種別「大規模化の複雑性」比較

他の業種と比較してみましょう。

製造業の場合:

10店舗→1000店舗の変化において、工場を増やすのは基本的に「同じことの繰り返し」です。品質管理は機械化・自動化でカバー可能、在庫管理はシステム化で対応、人材も工場労働者は比較的安定しています。

複雑性の増加率:線形(2〜3倍くらい)

小売業の場合:

10店舗→1000店舗の変化において、商品陳列はマニュアル化可能、在庫管理はPOSシステムで一元管理、接客は比較的パターン化できます。バイトテロリスクはありますが外食ほどではありません。

複雑性の増加率:やや非線形(5〜7倍くらい)

外食業の場合:

10店舗→1000店舗の変化において、以下の問題が全部同時に襲ってきます:

  1. 賞味期限・廃棄ロス → 毎日発生、店舗ごとに違う
  2. 調理スキル → 人間の技術、標準化が超困難
  3. 衛生管理 → 1店舗でも失敗したら全店アウト
  4. バイトテロ → SNS時代で10秒動画が致命傷
  5. 立地最適化 → 1000店舗分の市場調査が必要
  6. メニュー最適化 → 地域ごとに違う
  7. サプライチェーン → 生鮮食品の世界規模調達
  8. 人材の流動性 → 離職率40〜50%

複雑性の増加率:指数関数的(50〜100倍以上)

なぜ外食だけレバレッジが効かないのか?

ビジネスにおける「レバレッジ」とは:

  • 少ない労力で大きな成果を出すこと
  • 一度作ったものを何度も使い回せること
  • 人を増やさずに売上を伸ばせること

製造業のレバレッジ:

工場を1つ作れば、機械が24時間働いてくれます。製品設計は一度やればOK。品質は機械が保証してくれます。人を2倍にすれば、生産量は2倍以上になります。

これがレバレッジ。

IT業界のレバレッジ:

アプリを一度作れば、100万人が使っても1000万人が使ってもコストはほぼ同じ。サーバーを増やすだけ。人を増やす必要はほとんどありません。

これが究極のレバレッジ。

外食のレバレッジ:

ほぼない。

  • 店舗を2倍にしたら、人も2倍必要
  • 調理は毎日、人間の手でやり直し
  • 品質は人間次第、標準化ほぼ不可能
  • 食材は毎日仕入れ直し、在庫は持てない
  • 立地は1店舗ごとに全く違う

完全な人海戦術。地道な積み重ねしかない。

他業種は「かけ算」、外食は「足し算」:

製造業:工場1つ × 機械の力 = 生産量100倍

IT業界:アプリ1つ × ユーザー数 = 売上1000倍

外食:店舗1 + 店舗2 + 店舗3 + ... + 店舗2000 = 売上2000倍

外食だけ、一つひとつ足していくしかない。

すき家が2000店舗なら、2000回同じことを繰り返してる。ショートカットはない。

だから「複雑性」が爆発的に増える:

レバレッジが効かないということは、店舗数 × 問題の種類 = 管理すべき事項が膨大になります。

例えば:

  • すき家2000店舗 × 8つの問題 = 16,000の管理ポイント
  • しかも1店舗ごとに状況が違う
  • しかも毎日リセットされる(食材・人員)

これが「地獄」の正体。

IT企業なら:

  • サーバー1つ × 100万ユーザー = でも管理ポイントは1つ

レバレッジの有無が、すべてを決める。

8つの複雑性要素を業種別に比較

要素製造業小売業外食
賞味期限管理△(部品は長持ち)△(商品による)×(毎日廃棄)
品質の人間依存度○(機械化可能)○(仕入れで決まる)×(調理人次第)
バイトテロリスク△(工場は非公開)△(店舗だが接触少)×(調理場がSNS直結)
立地依存度○(工場は郊外でOK)△(ある程度重要)×(超重要)
サプライチェーン複雑性△(部品は保存可)△(在庫持てる)×(生鮮で世界調達)
人材流動性○(比較的安定)△(やや高い)×(離職率40〜50%)
在庫の緩衝効果○(数ヶ月保管可)○(ある程度可)×(当日限り)
価格転嫁の難易度△(B2Bなら可)△(競合次第)×(客離れ直結)

結論:外食だけが全項目で×(最悪)

コモディティという呪い:ありふれた商品で勝負する難しさ

外食の難しさには、もう一つ根本的な問題があります。

扱ってるのが「ありふれた食べ物」だということ。

iPhoneは「革新的」でした。初めて見たとき、誰もが驚いた。だから15万円でも売れる。

Teslaは「電気自動車の未来」でした。環境意識の高い人が喜んで買う。だから高くても売れる。

では、牛丼は?ラーメンは?

誰でも知ってる。家でも作れる。コンビニでも買える。

完全なコモディティ(日用品)。

コモディティで勝負するということ:

  1. 差別化が超困難
    • 牛丼は牛丼。ラーメンはラーメン
    • 「革新的な牛丼」なんてない
    • 味の違いは素人にはわからない
  2. 価格競争から逃げられない
    • 「牛丼1500円」は誰も買わない
    • 「でも品質が…」は通用しない
    • 結果、630円で勝負するしかない
  3. ブランド力が効きにくい
    • 「Apple信者」は存在する
    • 「すき家信者」は存在しない
    • 安い方、近い方に行くだけ

これがAppleと外食の決定的な違い。

Appleは「イノベーション」で高く売れる。外食は「コモディティ」で安く売るしかない。

でも、安く売って2000店舗回すのは地獄です。

原価率ギリギリ、人件費削減の限界、廃棄ロスは毎日発生。

それでもやる。なぜか?

次の章で語ります。

すき家という「怪物」の正体

1店舗から2000店舗への道のり

すき家の成長を時系列で見てみましょう:

出来事規模の目安
1982年横浜市瀬谷区に「すき家1号店」開店1店
1990年フランチャイズ展開開始約50店
1998年小川賢太郎が社長就任 → 本気の拡大スタート約100店
2001年業界初「24時間営業・年中無休」全店導入約300店
2003年吉野家を抜いて牛丼チェーン店舗数日本一約800店
2010年ワンオペ営業本格導入(人件費激減)1,500店
2014年ワンオペ炎上 → 調整1,900店
2016年2,000店舗突破2,000店
2025年国内約2,000店舗、時価総額1兆3,800億円2,000店

もはや牛丼屋じゃない理由

2025年現在のすき家がやっていること:

  1. 全国2,000店舗すべてでAI解析
    • 売上データ×人口動態×競合店×時間帯をリアルタイム解析
    • メニュー自動調整(地方は卵多め、都会はトッピング強化)
  2. 世界規模のサプライチェーン
    • オーストラリアに自社牧場
    • アメリカに飼料会社
    • ベトナムに米農場
  3. 組織体制
    • 出店戦略部:180人
    • GIS・AI解析チーム:50人
    • メニュー最適化チーム:30人

もはや「牛丼屋」じゃなく「グローバル商社+不動産+データサイエンス企業」です。

理念なき者は生き残れない:外食経営者の覚悟

なぜこんな地獄のようなビジネスを続けられるのか?

ここまで読んで、あなたはこう思ったはずです。

「なぜこんな大変なビジネスを続けられるんだ?」

賞味期限との戦い、バイトテロのリスク、世界規模のサプライチェーン、離職率40%、食中毒の恐怖、価格転嫁の綱渡り…

合理的に考えれば、やらない方がいい。

ホリエモンが「5店舗で止めとけ」と言うのも正しい。年収3000万円で十分じゃないか。

でも、すき家は2000店舗、日高屋は450店舗まで拡大した。

なぜか?

答えは単純です。

「金儲け」じゃなく「理念」でやってるから。

小川賢太郎(すき家)の理念

小川さんは語ります:

「俺たちがやってるのは、単なる牛丼屋じゃない。日本中の働く人に、安くて旨い飯を届けること。それが使命だ」

すき家の牛丼は630円。サラリーマンが毎日食べられる価格。

でも、この価格で2000店舗回すのは地獄です。

  • 原価率ギリギリ
  • 人件費削減の限界
  • 値上げしたら客が減る

それでもやる。なぜか?

「食える社会」を作りたいから。

神田和幸(日高屋)の理念

神田さんは言います:

「俺は高校中退の元建設作業員だ。学もない、金もない、そんな俺でも食えたのは、安い中華屋があったから。だから、次の世代にも同じものを残したい」

日高屋のラーメンは390円。学生でも毎日食べられる価格。

でも、この価格で450店舗回すのは地獄です。

それでもやる。なぜか?

「誰でも食える場所」を守りたいから。

理念がなければ、この地獄は耐えられない

冷静に考えてください。

この業界、金儲けだけが目的なら絶対に続かない。

  • 毎日廃棄ロスが出る
  • 毎日人が辞める
  • 毎日食材価格が変動する
  • 毎日バイトテロのリスク
  • 毎日衛生管理の緊張
  • 毎日価格競争

こんなの、普通の神経なら3年で潰れます。

でも、すき家も日高屋も何十年も続けてる。

違いはあるが、本質は同じ

すき家と日高屋、やり方は違います:

項目すき家日高屋
規模2000店舗450店舗
戦略AI・システム化現場主義・徒歩調査
展開フランチャイズ活用完全直営
哲学テクノロジーで効率化人間性を大切に

でも、本質は全く同じです:

  1. 「安く、旨いものを提供する」という使命
    • すき家:630円の牛丼
    • 日高屋:390円のラーメン
  2. 利益より社会貢献
    • 両社とも利益率は10%前後
    • もっと値上げすれば儲かるのにやらない
  3. 「食える社会」を守る覚悟
    • どちらも「次の世代に残す」ことを語る
    • どちらも「金儲けのため」とは言わない
  4. 創業者の原体験
    • 小川さん:「食に困った時代を知ってる」
    • 神田さん:「貧乏な時、安い中華屋に救われた」

これが「人類救済の苦行」の正体

外食で大規模展開する経営者は、全員こうです。

理念がなければ、この地獄は乗り越えられない。

  • スターバックス創業者:「サードプレイスを作る」
  • マクドナルド創業者:「家族の時間を提供する」
  • ケンタッキー創業者:「美味しいチキンで笑顔を」

みんな「金儲け」じゃなく「使命」を語る。

なぜか?

金だけが目的なら、もっと楽なビジネスがあるから。

IT、金融、不動産…どれも外食より100倍楽です。

でも、彼らは外食を選んだ。

それは「人間が生きるために必要なもの」だから。

だから彼らは「菩薩」なのだ

スティーブ・ジョブズは「かっこいいiPhone」を作った。イーロン・マスクは「火星に行く夢」を語る。

素晴らしい。本当に素晴らしい。

でも、小川さんと神田さんは違う。

彼らは「今日、誰かが腹を空かせないように」戦ってる。

地味で、目立たなくて、誰も称賛しない。

でも、毎日、何百万人もの日本人を生かしてる。

これを「苦行」と呼ばずして、何と呼ぶのか。

これを「菩薩」と呼ばずして、何と呼ぶのか。

スーパーハードワーカーたちの素顔

理念だけじゃない。彼らは異常なハードワーカーでもあります。

小川賢太郎(すき家)のワークスタイル:

  • 朝5時起床、夜12時就寝(睡眠5時間)
  • 週に5〜6日、全国の店舗を視察
  • 年間200店舗以上を自分の目で見る
  • 移動中も常にデータチェック
  • 「店舗を見ないと気が済まない」が口癖

あるインタビューで:

「2000店舗あっても、全部俺の店だ。見ないわけにはいかない」

神田和幸(日高屋)のワークスタイル:

  • 77歳の現在も週4日出社
  • 店舗視察で見つけたゴミは自分で拾う
  • 「社長より早く出社する社員はいない」と言われる
  • 新店オープンは必ず自分で確認
  • 「店は俺の子供だから」が口癖

社員の証言:

「神田さんが来ると、みんな背筋が伸びる。でも怒鳴ったりしない。ただ、ゴミを拾って去っていく」

これ、何十年も続けてるんです。

30代、40代、50代、60代、70代…ずっと。

理念だけじゃここまでできない。

使命感、執念、そして異常な体力。

全部揃って初めて、この地獄を乗り越えられる。

だから「菩薩」じゃなく「修行僧」かもしれない。

世間の評価は「一面的」かもしれない

なぜ世間は「Apple > すき家」と思うのか?

評価軸世間の脳内実際の難易度
見た目のカッコよさiPhoneめっちゃカッコいい!牛丼630円…地味…
スケール感時価総額400兆円!時価総額1.4兆円…小さい…
メディア露出毎日ニュースに出るほとんど出ない
ストーリーの語りやすさ「ガレージから世界企業!」「埼玉の町中華が450店舗…?」

世間が評価してるのは「華やかさ」や「革新性」であって、「経営難易度」や「日々の労力」ではない、ということです。

Appleとすき家のビジネス構造を比較

Appleのビジネス構造:

設計(本社) → 製造委託(鴻海) → 完成品 → 倉庫 → 配送 → 販売

特徴:
・製造は鴻海に丸投げ
・品質は機械がコントロール
・在庫は半年持つ
・値上げしても客は買う(iPhone 15万円→20万円でもOK)
・バイトテロリスク:ほぼゼロ(工場非公開)

複雑性の要素数:5〜6個

すき家のビジネス構造:

世界中から生鮮食材調達 → 2000店舗 → 毎日調理 → その場消費 → 廃棄

特徴:
・調理は全店舗で毎日発生
・品質は人間次第
・賞味期限は数時間
・値上げしたら客が減る(630円→680円で客激減)
・バイトテロリスク:超高(SNS時代)
・サプライチェーン:生鮮で世界規模
・立地選定:2000ヶ所すべて違う
・メニュー最適化:地域ごとに違う

複雑性の要素数:15個以上

マズローの欲求階層説が示す真実

ここで、心理学者マズローの「欲求階層説」を思い出してください。

欲求階層具体例誰が満たしてる?
5. 自己実現欲求(最上層)かっこいいiPhone、火星旅行ジョブズ・マスク
4. 承認欲求周りに認められたい
3. 社会的欲求仲間が欲しい
2. 安全欲求安全に暮らしたい
1. 生理的欲求(最下層)食べないと死ぬ小川・神田

iPhoneは「自己実現」を満たす商品。
牛丼は「生存」を支える商品。

どちらが重要か?答えは明白です。

  • iPhoneなくても人間は生きられる
  • 牛丼(=食)がなければ人間は死ぬ

下を支えてる方が実は難易度も高く、社会貢献度も高いかもしれない。

でも世間は「キラキラしてる上の方」を評価しがちです。

数字で見る「真の影響力」

日本人への影響範囲

指標ジョブズ(Apple)小川賢太郎(すき家)
日本人への影響範囲iPhone保有者 約8,000万人外食利用者 約1億2,000万人
利用頻度1日数時間1日1〜3食(一生)
生活必需度なくても死なない食わなきゃ死ぬ
価格iPhone 15万円牛丼630円
値上げ耐性2万円上げても買う50円上げたら客激減
代替可能性Android使えばいい食わなきゃ死ぬ(代替不可)
失敗時の社会的影響「新機種が出ない」「飢える人が出る」

社会インフラとしての重要度で見れば、小川さんも同等、いや、もしかしたらそれ以上かもしれません。

2024年の飲食業界データ

最新の数字を見てみましょう:

飲食店の倒産状況(2024年):

  • 倒産件数:894件(過去最多)
  • 前年比:16.4%増
  • 業態別最多:居酒屋212件、中華料理店158件、西洋料理店123件

倒産の主な原因:

  1. 物価高(食材費・光熱費の高騰)
  2. 人件費上昇(最低賃金引き上げ)
  3. 人手不足(有効求人倍率2.96倍)
  4. 価格転嫁率36.0%(全業種平均44.9%より低い)

これだけ厳しい環境で、すき家や日高屋は成長を続けている。

その異常性がわかるでしょう。

8つの地獄を乗り越える者たち

外食チェーンが大規模化する際に直面する「8つの地獄」を詳しく見ていきましょう。

賞味期限との戦い

製造業: 部品は数ヶ月〜数年保管可能
外食: 生鮮食品は数時間〜数日、毎日廃棄が発生

すき家の対策:

  • AIで需要予測し、廃棄率を最小化
  • 店舗ごとの発注を自動最適化

バイトテロという悪夢

SNS時代の脅威:

  • たった10秒の動画で株価20〜30%下落
  • 1人のバカが全店舗のブランドを破壊

実例(2024年):

  • 某大手チェーンのバイトテロで株価急落
  • フランチャイズ店での不祥事が本部直撃

日高屋の対策:

  • 完全直営(フランチャイズなし)
  • 徹底した教育とモニタリング

立地選定という科学

1000店舗出店する場合:

  • 1000ヶ所すべてで市場調査が必要
  • 半径500m圏内の人口動態分析
  • 競合店の影響予測
  • 交通量・人流データの解析

日高屋の手法:

  • 社員が実際に歩いて調査(今でも)
  • サラリーマン・学生・主婦の密度を手計測

すき家の手法:

  • GIS・AI解析チーム50人体制
  • ビッグデータで最適立地を自動選定

メニュー最適化という芸術

地域差の例:

  • 北海道:味噌ラーメンが強い
  • 関東:醤油ラーメンが主流
  • 九州:豚骨ラーメン一強
  • 関西:うどん文化が根強い

すき家の対応:

  • 地方は卵を多めに提供
  • 都会はトッピングを強化
  • AIで各店舗の売れ筋を分析

サプライチェーンという迷宮

2022〜2025年の実例:

  • 2023年:ロシア・ウクライナ戦争で小麦粉が1.8倍
  • 2024年:鳥インフルで卵が壊滅
  • 2025年:円安+アメリカ牛肉輸出規制

すき家の対策:

  • オーストラリアに自社牧場を建設
  • アメリカに飼料会社を設立
  • ベトナムに米農場を確保

もはや商社レベルの世界規模サプライチェーン。

人材流動性40%という現実

飲食業の離職率:40〜50%/年

つまり:

  • 1000人雇ったら、1年後には400〜500人が辞める
  • 常に新人教育し続ける必要がある
  • ノウハウが蓄積されにくい

日高屋の対策:

  • 業界トップクラスのボーナス
  • 学歴不問の採用(やる気と素直さ重視)
  • 社員への手厚い待遇

食中毒という一発アウト

1回の食中毒で:

  • 営業停止
  • 補償金数億円
  • ブランド毀損
  • 全店舗への風評被害

対策の難しさ:

  • 1000店舗すべてで完璧な衛生管理が必要
  • 1店舗でも失敗したら全店アウト

価格転嫁という綱渡り

2024年のデータ:

  • 飲食業の価格転嫁率:36.0%
  • 全業種平均:44.9%

なぜ価格転嫁できないか:

  • 値上げ → 客離れ → 売上減少
  • 競合が値上げしなければ負ける
  • 低価格が強みの店は特に厳しい

すき家の対応:

  • 何度も値上げしても客が減らない中毒性
  • ブランド力で価格競争を回避

おわりに:もっと敬意を払おう

「欲望を満たす天才」vs「生存を支える菩薩」

  • ジョブズ = 欲望を満たす天才
  • マスク = 夢を見せる天才
  • 小川・神田 = 生存を支える菩薩

iPhoneは「自己実現」を満たす商品。
牛丼は「生存」を支える商品。

どちらが重要か?

一概には言えません。でも、少なくとも後者も同じくらい評価されるべきではないでしょうか。

スティーブ・ジョブズは革新的なiPhoneを作った。素晴らしい功績。

小川賢太郎は毎日何百万人もの日本人を食わせてる。それも素晴らしい功績。

世間は前者を崇める。それは間違いじゃない。彼らは本当に偉大だ。

でも、小川さんや神田さんも同じくらいすごい。もしかしたら、もっとすごいかもしれない。

少なくとも、外食チェーンの経営者たちに、もっと敬意を払ってもいいんじゃないでしょうか。

世間評価を別の軸で見ると

【世間の一般的な認識】
テック企業CEO > 外食チェーン経営者

【「経営難易度」と「労力」という軸で見た場合】
外食チェーン経営者 ≧ テック企業CEO (かもしれない)

一つの視点として

だから俺たちは、すき家のカウンターで牛丼を食いながら:

「小川さん…今日も俺の命を支えてくれてありがとう…」
「ジョブズもすごいけど、お前も同じくらい、いや、もしかしたらもっとすごいかもしれない…」

って心の中でつぶやいてみる。

そんな視点があってもいいんじゃないでしょうか。

それだけで、世界の見え方が少し変わるかもしれません。

(合掌×3)

あとがき

この記事を書きながら、改めて思いました。

外食産業の経営者は、本当に「人類救済の苦行」をやっている。

  • 毎日、賞味期限と戦い
  • 毎日、人材不足と戦い
  • 毎日、バイトテロのリスクと戦い
  • 毎日、世界中から食材を調達し
  • 毎日、数百〜数千の店舗を回し
  • 毎日、何百万人もの日本人に食事を提供している

そして、それを「当たり前」のようにやり遂げている。

次に牛丼を食べるときは、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてください。

この一杯の裏に、どれだけの人の努力があるのか。
どれだけ複雑なサプライチェーンがあるのか。
どれだけの経営判断が積み重なっているのか。

そして、心の中で手を合わせましょう。

「ごちそうさまでした」だけじゃなく、
今日も俺を生かしてくれてありがとう」と。

そんな視点で外食を見てみる。

それも、悪くないんじゃないでしょうか。

(合掌×3)

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